新型コロナウイルスワクチン接種に関して
米国ファイザー社のワクチン「コミナティ」の添付文書は「妊婦または妊娠している可能性のある女性には予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ摂取する事」とされています。今回特例承認されたワクチンの安全性と有効性は概ね確立していますが、新しいワクチンである為、妊産婦を対象とした治験の結果は得られておらず、厳密には安全性や有効性について十分評価はなされていません。その為、ワクチン接種に関して当院としては、「推奨はしているが、最終的には妊婦さん自身の判断に委ねる」としかお答えすることは出来ません
日本産婦人科学会と日本婦人科学会の最新の提言を以下に掲載します。
―新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについて(第 2 報)―
昨今、新型コロナウイルスが若年者を中心に急速に感染拡大し、多くの妊婦さんの感染も確認されていま
す。一方で、新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンは、高齢者に限らず基礎疾患を持つ者、
それ以外の者へと順次拡大されております。
① アメリカ疾病対策センター(CDC)は妊婦さんへのワクチン接種を強く推奨する声明を出しています。
わが国においても、妊婦さんは時期を問わずワクチンを接種することをお勧めします。
② 妊婦が感染する場合の約8割は、夫やパートナーからの感染です。
そこで、妊婦の夫またはパートナーの方は、ワクチンを接種することをお願いします。
なお、このお知らせは、最新の知見に基づいて 6 月 17 日のお知らせを更新するものです。
1. 妊娠中、特に妊娠後期に新型コロナウイルスに感染すると、重症化しやすいとされています。
2. 全国的に感染地域が拡大し、感染の多い地域では感染拡大が過去にない拡大となっています。そのよう
な地域にお住まいの方や、糖尿病、高血圧、気管支喘息などの基礎疾患を合併している方は、ぜひ接種
をご検討ください。
3. 副反応に関し、妊婦さんと一般の人に差はありませんが、発熱した場合には早めに解熱剤を服用するよ
うにしてください。アセトアミノフェンは内服していただいて問題ありませんので頭痛がある場合も内
服してください。
4. 副反応の有無にかかわらず、妊娠の異常(流産、早産、その他)の頻度はワクチンを打たなかった妊婦と同
じであると報告されています。
なお、接種を希望される場合は、以下の点にご留意ください。
⚫ 新型コロナワクチン接種の予診票には、「現在妊娠している可能性はありますか。または授乳中ですか。」
という質問がありますので、「はい」にチェックし、あらかじめ健診先の医師に接種の相談をしておき
ましょう。接種してよいと言われていれば、その旨を接種会場の問診医に伝えて、接種を受けてください。
⚫ 妊娠中の方は、里帰り先の住民票と異なる居住地の産科医療施設で接種を受ける場合「住所地外接種届」
の提出は不要です(接種場所により届け出が必要になることもあるので、里帰り先の行政機関にお問い
合わせください)。
⚫ 予定された 2 回のワクチンを接種しても、これまでと同様に感染予防策(適切なマスク使用、手洗い、
人込みを避けるなど)は続けてください。
以下、URLから厚生労働省のHPで妊娠中・授乳中のコロナワクチン接種に関するQ&Aが確認できます
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0027.html
授乳中の安全性について
米コミナティ筋注、COVID-19ワクチンモデルナ筋注の添付文書では、予防接種上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討することと記載されています。
このワクチンの性質からは、母乳移行量は非常に少なくなると考えられています。さらに多少のワクチン成分を含んだ母乳を赤ちゃんが飲んだとしても、赤ちゃんに悪影響が及ぶとは考えられません。
実際にワクチン接種後の母乳移行について調べた研究では、母乳中にmRNAは検出されなかったと報告されています。また、多くの赤ちゃんで問題はみられなかったとの報告もあります。
これらのことから、授乳中のワクチン接種は問題ないと考えます。
※副反応での解熱鎮痛薬の使用について
妊婦さんの場合、アセトアミノフェンは使用可能ですが、非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェン、ロキソプロフェン等)の妊娠後半期の使用は避けるべきと考えられています。
授乳婦さんの場合、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェン、ロキソプロフェン等)ともに安全に使用できると考えられます。