硬膜外無痛分娩マニュアル

インフォームドコンセント

  1. 「無痛分娩について」(別添付文書参照)等を用い、外来にて患者説明を行う
  2. 生じうる合併症としては、頭痛・背部痛・血圧低下・血腫・感染・神経損傷などについて説明する
  3. 局所麻酔中毒やクモ膜下誤注入等の予期せぬアクシデント発生についても説明し、そのような場合の対応として無痛分娩を中止する可能性についても説明し、理解してもらう
  4. アクシデントの発見のため、少量分割注入を行うことで重篤な状態を回避できることも説明し、安心も提供する
  5. 完全な「無痛」ではなく、痛みの軽減が実際の目的であり、効果には個人差があることを理解してもらう麻酔分娩のため禁食の意義を理解してもらうが、水分摂取については経口補水液(OS-1等)であれば摂取可能と説明する
  6. 計画(誘発)分娩の場合、分娩進行には個人差があり、当日必ず分娩に至るとは限らず、翌日に再誘発が必要になることも有り得ることを理解してもらう計画分娩の時期は、胎児発育等を考慮しながら、初産婦は39週以降、経産婦は38週以降が適当と説明する
    計画無痛分娩の場合、予定より早く陣痛発来や破水の可能性もあり、状況によって(夜間・時間外・日曜・祭日・常勤医不在時・スタッフ不足時・他に無痛分娩対応者がいる時など)は無痛分娩の対応ができないことも有り得ることを理解してもらう
  7. 硬膜外カテーテル留置・鎮痛及び分娩誘発を担当するのは、当院常勤産科医(産婦人科専門医取得)が担当することを説明する

硬膜外カテーテルの挿入(計画無痛の場合、原則前日施行)

  1. 20G留置針にて静脈ルートを確保し、膠質液(ソルアセト)500~1000㏄投与(持続点滴)を行う。胎児心拍監視装置を装着する
  2. 生体モニター装着し、血圧・脈拍数・呼吸数・SpO2等の持続観察・記録を行う
  3. 左側臥位で腰を丸める体勢をとり、穿刺部位を十分アルコール消毒を行う
    2%キシロカイン適量で穿刺部(L3/4又はL2/3)に局所浸潤麻酔を行う
    18Gツーイ針(硬膜外穿刺針)を正中からアプローチして、生理食塩水3㏄程吸引したガラスシリンジを少しずつ押し込みながら、LOR(loss of resistance)法・抵抗消失で硬膜外腔到達を確認する
    カテーテルは頭側に3~5㎝挿入・留置して、血液や脳脊髄液が吸引されないことを確認する
    さらにカテーテルより2%キシロカイン3~4ml注入(テストドーズ)で全身所見に変化・異常無いことを確認後、ドレッシングテープで刺入部を固定、余剰のカテーテルは背中から肩口にかけてシルキーポアで体表に固定する
    フィルター部はガーゼに包み、体表に固定する
  4. テストドーズ注入後30分間は、2.5分毎に血圧測定し、自覚症状・生体モニター及び胎児心拍モニターに異常が無いことを確認し、歩行状態・排尿等問題無ければ、帰室する
    21時以降は禁飲食とする
  5.  

ミニメトロの挿入(子宮口の開大不良の場合)

  1. 子宮口開大が不良の場合(子宮口1~2㎝以下の場合)はミニメトロ挿入を行うが、初産婦…前日、硬膜外カテーテル留置後挿入
    経産婦…当日の朝、オキシトシン点滴開始30分前に挿入
  2. 分娩監視装置装着し、児心音や患者全身状態に注意しながらミニメトロ(40㏄)を挿入する

分娩誘発と硬膜外鎮痛法

やはたウィメンズクリニック

  1. 計画分娩当日、禁飲食のためAM7時頃から補液開始(ソルアセト)、分娩監視装置にて児心音・子宮収縮状態確認し、AM7時半頃からオキシトシン点滴開始
    5%ブドウ糖500mlにオキシトシン5単位を溶解し、10ml/時から開始し、30分毎に10ml/時ずつ増量する
    最大点滴速度は120ml/時とし、有効陣痛が得られれば、その時点で増量は中止する
    夕方までに有効陣痛が得られず、子宮口開大等の分娩進行が不良の場合は、その時点で患者に状況説明し、陣痛誘発剤投与を中止し、夜間は自然経過観察とする
  2. ミニメトロ脱出後、有効陣痛があり児頭下降(児頭下降度:-2㎝以上)が認められれば、積極的な人工破膜を考慮することもある
  3. 産婦の要求(痛みの訴え)があれば、硬膜外鎮痛法を開始する。
    生体モニター装着し、導入直後~15分は2.5分毎、15~30分は5分毎、それ以降は15分毎に血圧等のチェックを行う
    ・鎮痛の導入…0.2%ロピバカイン(アナペイン)を吸引テスト後、副作用チェックしながら3~4mlずつ少量分割投与(3回)する
    ・鎮痛の持続…0.08%ロピバカイン(アナペイン)+フェンタニル2㎍/mlをシリンジポンプで8~12ml/時で持続注入。途中、VAS(visual analogue scale)にて痛みの評価を行い、産婦の訴え(痛み)が強ければ、ボーラス投与(5~10ml)を行う。麻酔効果の偏りがある場合は、体位変換やカテーテルの微調整を行う
  4. 鎮痛法導入後は歩行が困難となるため、定期的に導尿を行う
    患者状態変化(血圧低下や発熱等)や児心音低下など、異変が生じた場合、担当助産師は速やかに分娩担当医に上申報告する。血圧低下時は、下肢挙上及び補液の急速負荷等を行う
  5. 鎮痛法開始し、30分以上経過しても鎮痛効果が得られない場合は、硬膜外カテーテル再挿入を考慮する

分娩終了後

  1. 胎児娩出後、会陰切開・裂傷部縫合にも鎮痛法は有効であり、産科的処置終了後は速やかに硬膜外カテーテルを抜去し麻酔終了となる
    分娩後2時間は分娩室にて経過観察し、全身所見・歩行・排尿等に問題無ければ帰室とする

重大合併症発生時の対応…ABC蘇生のできる準備・救急カートの準備

  1. 局所麻酔中毒…初期症状(口唇や舌の痺れ・金属味・不穏・興奮・多弁・呂律困難・視力や聴力障害・耳鳴り・めまい・ふらつき・痙攣等)を認めたときは、直ちに局所麻酔薬を中止し、救急カート準備、生体モニターで厳重監視を行う
    心電図でPR延長やQRS幅の増大が特徴
    意識障害・痙攣・重症不整脈・循環虚脱等出現時は、20%脂肪乳剤(イントラリポス)の静脈内投与を行う
    (一本目:1分間でボーラス静注、2本目:全開で点滴静注、3本目:1本目から5分後1分でボーラス静注、4本目:3本目から5分後1分でボーラス静注)この段階で、高次施設へ連絡し、母体搬送を依頼
    必要に応じて、気道確保・人工呼吸・酸素投与行い、痙攣にはジアゼパム投与、血圧低下にはエフェドリン等の投与を行いつつ、母体搬送を行う
  2. 全脊髄クモ膜下麻酔…薬剤用量に見合わない麻酔効果(血圧の急激な低下や下半身麻痺等)が出現時は全脊麻を考慮し、硬膜外カテーテルの吸引を行い、脳脊髄液が吸引されれば、それ以上の薬液注入は行わない
    生体モニターにて厳重に全身管理し、症状の悪化(全脊髄クモ膜下麻酔の可能性…意識消失・徐脈・低血圧・呼吸抑制等)があれば、直ちに高次施設に連絡し母体搬送を依頼。気道確保・人工呼吸・昇圧剤投与等を行いつつ、救急搬送を行う
  3. 硬膜外血腫(無痛分娩後)…麻酔終了後、両側性の感覚または運動障害が発生し、症状の悪化や拡大があり、穿刺部位の叩打痛がある時は硬膜外血腫の可能性を考慮し、症状強い時は整形外科的に精査を依頼する
  4. 硬膜穿刺後頭痛(PDPH:post dural puncture headache)…硬膜外穿刺の際、偶発的に硬膜を穿刺して破った後に起こる頭痛、あるいは脊髄クモ膜下麻酔後に起こる頭痛をPDPHという
    立位や座位で症状悪化、臥位で症状改善するのが特徴で、軽症の場合は安静臥床を勧め鎮痛剤(カロナール、ロキソニン・カフェインなど)の投与を行う
    重症で症状の改善が困難な場合は、硬膜外自己血パッチ法が有効であり、この場合整形外科等に精査・加療を依頼する

硬膜外無痛分娩看護マニュアル

妊娠中

  1. 分娩予定日を決定する妊娠10~12週前後の健診時、当院での出産を希望した妊婦に対し、当院での分娩方法の選択肢の一つとして無痛分娩があることを伝える
    詳細はHPを見て頂き、健診時にいつでも質問をして頂いて構わないことを伝える
  2. 初期に提出する分娩予約用紙に分娩に関する希望について記入する項目を設け、自分の分娩に関して考えて頂き、希望を病院側へ書面で伝える形としている
    その用紙に無痛分娩希望の有無を項目の一つとして入れている(無痛分娩の予約ではない)
  3. 妊娠32週前後の妊婦健診で最終的な意思確認を医師が行う
    リスクや方法について十分な説明を医師が行い、インフォームドコンセント後に入院日を決定し同意書に日付を記入し手渡した時点で予約成立とする
    当日の入院や、家族の面会、詳細な流れ等の補足をナースサイドで行う
  4. 安全管理、マンパワーの関係で、無痛分娩は平日昼間のみ、1人/日限定を基本としていることも医師から説明してもらい、夜間や日祝日の緊急入院時に対応できないことも了承して頂く
  5. 無痛分娩のみの特別クラスは設けていないが、通常の母親学級への参加が可能であることも話し、母親学級で個別対応できる時間を設けておく

入院時(無痛分娩用カテーテル挿入日)

  1. 母児の情報収集、バイタルチェックと質問事項や不安事項の最終的な体調の確認
  2. 同意書の確認、記入漏れのチェック、署名の確認
  3. 医師へ最終的な指示の確認
  4. 救急カートの確認、準備(蘇生薬のほか、イントラリポスを常備)
  5. 20G留置針でルートキープし、ソルアセト500mlを処置前に1本以上入れる
  6. 硬膜外麻酔導入の体勢をとる介助を行う
  7. 物品の準備、無菌操作で展開
  8. ソルアセト500mlを2本目へ 自動血圧測定を2.5分毎に設定する
  9. 挿入体位のままで2%キシロカイン2~3ml注入(テストドーズ)
    カテーテル刺入部にIV3000ドレッシングテープを貼るところまで医師に行ってもらう
    (刺入部からの漏れや血液汚染の確認が出来る保護材を使用)
    カテーテルチューブを背中から肩口にかけてシルキーポアで固定
    テストドーズ終了後、フィルター部をガーゼで包み体に固定する
  10. カテーテル挿入後、初産のみ内診(医師)
    頸管熟化(子宮口開大)なければ、ミニメトロを挿入をし、生理食塩液40㎖で固定する(医師)
  11. テストドーズ注入後は30分間、2.5分毎で自動血圧測定(臨機応変に) 
    局所麻酔薬の異所誤注入症状の早期発見⇒速やかな医師への報告とマンパワーの確保
    神経興奮症状(めまい、痺れ、耳鳴り、多弁)⇒心血管症状(低血圧、不整脈、心停止)への移行を見極めて連続測定とする

誘発無痛分娩当日

(1)誘発の開始(夜勤者)

    1. 救急カートの確認
    2. 6:30頃から分娩室へ移動して補液開始(ソルアセト 500ml)1~2時間程度でおとす
      (処置前に必ず1本は入れる)硬膜外麻酔使用時も飲水は可能であることを説明する
    3. 分娩監視装置を装着し、オキシトシン5単位+5%Glu 500ml 10ml/hで開始
      (10㎖/hずつ30分毎に増量、120㎖/hまで)
    4. ソルアセト500ml 2本目追加し、60ml/h程度で側管よりおとす(目安)
    5. 経産婦は必要時、ミニメトロ挿入(処置方法は初産婦の方法と同様)
    6. 内診(ミニメトロが脱出していたら抜去)必要なら人工破膜施行

(2)硬膜外麻酔薬の持続注入

    1. 痛みが出てきたら医師に報告し麻酔開始の準備を開始する
      心電図モニターを装着し、持続自動血圧測定を開始する 
      自動血圧測定間隔は 開始後0~15分は2.5分毎、15~30分は5分毎、以降は15分毎
    2. 記録は通常の分娩記録に準ずるが、心電図及び自動血圧測定の値は全分娩時間分をプリントアウトして貼り付ける
    3. 薬液の準備は助産師が行い、作成は医師が行うことによってWチェックとする
      <使用薬液>
      50㎖シリンジ1本、10㎖シリンジ1本、無痛分娩用エクステンションチューブ0.2%アナペイン3本、
      フェンタニル1本、(生理食塩水20㎖×2本)
      ・鎮痛の導入用・・・0.2%アナペイン10㎖を3~4㎖ずつ5分間隔で分割投与(医師)
      ・鎮痛の持続・・・・・0.2%アナペイン20㎖+生理食塩液28㎖+フェンタニル2㎖
        分割投与終了後、シリンジポンプで10ml/hで持続注入開始、
        疼痛訴えあった場合、ml/h早送りして良い(30分毎に1回早送り可能)
    4. 薬液使用後は分娩台の上から降りないように確認する 
      ファーラー位~左右側臥位で、自己体位変換可能であることを説明する
      (足に力が入らないレベルの効き目の場合は持続注入量を減量する)
    5. トイレは3~4時間ごとに導尿を行う
    6. 麻酔開始後の異常症状出現時(血圧低下・意識レベル低下・児心拍低下)には速やかに医師へ報告し、
      救急カートを患者サイドへ移動させ、処置が必要な場合にはスタッフを集める
    7. 麻酔を開始し、30分以上経過しても鎮痛効果が得られない場合には、医師に報告し、カテーテルの再挿入を検討してもらう
    8. 患者の訴えが通常の分娩進行と違って得られにくい為、一般状態及び持続の分娩監視装置、
      心電図モニター、自動血圧測定を実施し、異常の早期発見に努めるとともに安全な分娩介助を行うための準備を怠らない

(3)分娩介助

  1. 分娩時、麻酔の影響で努責が上手く入らない、陣痛が弱く分娩の進行が停滞している場合は医師と相談の上、持続注入量を減少させていく等の処置を行うその際、必要性を産婦へきちんと説明し、痛みが強くなってきた場合にパニックに陥らないように声掛けを行い誘導していく
  2. 吸引、鉗子分娩となる可能性が高い為、あらかじめ準備してお
  3. 弛緩出血のリスクを考慮し、出血量のカウントを行い医師へ報告する
  4. 出血量が多い場合はマンパワーを確保し、保温された細胞外液または膠質液の投与の指示を医師へ確認する
  5. 会陰縫合終了後に、硬膜外麻酔液の投与を中止する
  6. 全身状態の問題がなければ、清拭及び更衣を行う 
    心電図モニター及び持続自動血圧測定は産後2時間まで装着し、引き続き全身状態の観察に努め、全身状態に問題なければ食事摂取可能とする

  7. 下肢の痺れや違和感が消失し、バイタルサイン、出血量や創部の異常がないことを確認できた時点で帰室準備を開始する
  8. 帰室時に導尿を行い、車椅子で病室まで移送する
    点滴は初回歩行開始まで持続的に確保しておく
  9. 尿意があればナースコールまたは、帰室後3~4時間経過しても尿意が分からない状態ならば、トイレ歩行を誘導し、歩行状態の確認をする
    自尿がなかった場合は飲水を促し、2時間程度経過したところで再度自尿を促す尿意があり、トイレ歩行したが尿が出せない状態(尿閉)となった場合は導尿施行
  10. 歩行問題なく、自尿確認ができた時点で点滴抜去

費用につい

通常の分娩費用+約80,000円(前日入院、薬剤、器材、処置技術料、無痛分娩管理料等)
※その他、予約日以外の入院となった場合や夜間休日の分娩となった場合は、別途料金が加算されます

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